2021年のツール・ド・フランスが終わり、UAEチームエミレーツのタデイ・ポガチャル選手が2位以下を一切寄せ付けない圧倒的な走りを披露しました。
2年連続の総合優勝は凄いですね。昨年の大逆転とは違い圧巻の王者の走りでした。
僕は2021年 ツール・ド・フランス 第17ステージの解説をJ SPORTさんで務めさせてもらいました。
解説に入る前の勉強として、ポガチャル選手は何でこんなに強いんだろう?分かりやすい理由があるなら知りたいということで海外サイトの記事を探してみました。
すると面白い事が書いてあったので、解説中も少し話させてもらいましたが、ここでも更に詳しく書いてみようと思います。
大きいサイトなので信憑性はあると思いますが、100%合っているかは分かりません。
目次
ポガチャル選手のコーチが話した記事
ポガチャル選手のコーチを務めるサンミラン(←多分この読み方で合っているはず)さんという方の話が記事であったので読んでみました。
サンミランさんはコロラド大学の医学部で細胞代謝などその他様々なことを研究している教授です。
大学の教授の他にポガチャル選手が所属しているUAEチームエミレーツのパフォーマンスディレクターをしているみたいです。
他に指導している選手として元世界チャンピオンのルイ・コスタ選手、若手期待のブランドン・マクナルティ選手、いぶし銀の走りが眩しいディエゴ・ウリッシ選手などがいるようです。
自転車ロードレースのコーチとは?
現在の自転車ロードレースの世界では選手に対してパフォーマンスコーチが就くのは当たり前になっています。ワールドツアーチームの選手でコーチがいない選手はおそらく1人もいません。
パワーメーターを使ったパワートレーニングが当たり前になったことで、日々のトレーニングの組み立て、選手のコンディショニングを行っていきます。
日々のトレーニングはコーチが細部まで拘って作成しています。
例えばこのような練習でここの能力を高めていこう(その為に様々な練習メニューを組み合わせる)だとか、疲労数値の計算、レースまでにどれくらいコンディショニングを上げていくかの計算などです。様々な数値だけでなく体感的なことも含めて選手と密に連絡を取りトレーニングスケジュールを組んでいます。
コーチの職業は付け焼き刃で出来るほど甘くはなく非常に難しい職業です。トレーニングは日々進化しており、この練習メニューはあまり効果がなかったなだとか、この練習メニューはかなり効果があったななどと世界中でその時その時に流行っている練習が違ったりします。
ポガチャル選手の強さの秘訣
コーチが話した強さの秘訣は3つありました。
異常な回復力
まずはこれです。
他の選手より乳酸を取り除き、回復する能力が異様に高いようです。
簡単に言ってしまえば他の選手が3日疲労を抜くのにかかるのを1日で疲労が回復してしまうということみたいです。
この能力はかなり遺伝的なもので人によってかなり違うらしいです。
つまりポガチャル選手はある程度生まれた時点から回復力が高い体質ということですね。
異常な回復能力を持つとどうなるか
異常な回復能力を持つとどうなるかを僕が考えてみます。
自転車選手で大事なこと
話は少し逸れますが、僕は自転車ロードレースの選手で最も大事なことは普段の過ごし方だと思っています。普段の練習をしっかり行わずにレースでいきなり走れることはありません。
特にこのパワーメーターを誰でも手に入れてトレーニングができるようになった時代。
近年のトレーニングは先程も書きましたがかなり念密に作られています。しっかり作られたトレーニングをこなせばレース当日に調子が悪いということはあまり聞きません(コンディションが上がっていない、コンディショニングが上手くいかないことも勿論あります)
ここが過去に感覚でやっていた練習とは違うところがあります。
身体の問題、例えば怪我や体調を崩すなどがあってトレーニングが上手くできなかった時などは、コンディションも上がっていないということを数値で見れる時代になっています。するとレースでも走れないということはある程度自分でスタート前に分かるのではないかと思っています。
なので僕は練習がレースまで上手くできた時は自信を持ってレースに挑めたりします。逆もしかりです。
回復が早ければ練習の密度が違う
回復が早いということは何もレースの時だけではありません。普段の練習でも回復が他の選手より早いということです。
つまり他の選手より疲労度が高く、密度の濃い練習を普段からこなすことができるということです。
レースは勿論キツいですが、練習もかなりキツいです。キツい練習の日の疲労は練習後全く動ける気がしない程です。
練習をしっかり行うことはかなり大事ですが、練習をやりすぎることは良くありません。練習を自分のキャパを越えてやり過ぎてしまうとコンディションは上がるどころか下がっていってしまいます。
なのでコンディションはいきなり上げずに少しずつ上げていきます。疲労度と相談しながらオーバートレーニングにならないようにギリギリを攻めて上げていくということです。
ここまで読めば回復が早いポガチャル選手が他の選手に比べて、濃い内容の練習を連日行えて強くなるということが分かると思います。
あのレベルで普段の練習から他の選手より高い負荷で行えるわけですから、レースではむしろ楽なのかもしれません。
そして連日行われるレースでは他の選手が限界で走った時には回復まで時間がかかり、次の日に疲労を引きずる時にポガチャル選手は疲れていない。これは長いレースではかなり大事です。ポガチャル選手がステージレースで崩れることがないのは異常な回復力があってのことだということでした。
メンタルが強い
2つ目はメンタルが強いということです。
コーチの方いわくポガチャル選手はプレッシャーやストレスを感じていないみたいです。
トップの選手でも多くの選手が不安障害を抱えたりしている中、ポガチャル選手そのようなことはないようです。緊張もすることがないとのことでした。
プレッシャー、ストレス、緊張を感じない、つまり自分の力をいつでも100%出せるということです。
これはかなり凄いことだと思います。
緊張は全てが悪いことだとは思いませんが、良い方向に働くこともあれば悪い方向に働くこともあります。僕は緊張すると良くない方向に働くことが多いです。
緊張してしまいそうな時は自然体、自然体と言い聞かせています。
J SPORTの解説は初めてのことだったので緊張しました。自然体自然体と言い聞かせましたがダメでした。笑
メンタルが強いポガチャル選手は解説をしても上手かもしれませんね。
日々のトレーニングで作る身体
3つ目は日々のトレーニングで作られる強い身体です。
1つ目の回復能力を生かしてコーチが作っています。ポガチャル選手の回復能力の凄さを知っている医学部の教授が作る練習です。
乳酸クリアランス能力を改善し、ミトコンドリア機能を高めるトレーニングを行っているようです。
ミトコンドリアの有酸素運動においての役割を調べた記事はまた今度書きたいと思います。
コーチに選手が合う、合わないもあります。この選手の強みはここだと分かっているコーチが作る練習と、皆がやっている練習だからこの選手にもこの練習をさせれば良いだろうと練習を作るのは大違いです。選手の強み、弱み、身体的特徴を分かって練習を作成してくれるコーチは良いコーチです。
ポガチャル選手にとっては凄く相性の良いコーチなのでしょう。
まとめ
ツール・ド・フランス2021を圧倒的な強さで総合優勝したタデイ・ポガチャル選手。
ここからあと何年ツール・ド・フランスを勝つのでしょうか。
勝った理由は多くが遺伝的な能力が占めていると思いますが、それも努力しなければ宝の持ち腐れです。
身体的才能に精神的な才能もないと一流にはなれないということで、ポガチャル選手は両方を持ち合わせているみたいです。
強い一番の理由は遺伝からくる回復能力の高さということでした。
ここにはまだ書いていないですが、ミトコンドリアを活かすにはに空気を多く身体に取り込めないといけません。それももともと遺伝的に持ち合わせていて、トレーニングでも向上させているみたいですね。
走りもアグレッシブで今後も見るのが楽しみな選手です。本当にあと何年ツールドフランスを勝ってしまうんでしょうか。