プロサイクリスト 伊藤雅和

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ブログ 自転車ロードレースとは

集団前方、後方の話と世界的スプリンターは山が速いという話

投稿日:2020年5月5日 更新日:

自転車ロードレースは集団で走ります。集団の中でどこで走るとどうなるかという仕組みを話したいと思います。

もう1つ「スプリンター」は上りが苦手と言われていますが、世界で活躍する近頃の「スプリンター」は僕なんかより上りは速いと痛感したレースエピソードがあるので紹介したいと思います。

 

集団後方はツラい

これはあるワールドツアーのレースで世界の超一流選手「ペーター・サガン」選手と走った時の話になります。

そのステージはスタートしてから比較的長い丘、アップダウンが続いたステージでした。

スタートしてから集団はかなりのハイペース、縦に長く伸び、上りの度に僕は全力、下りも速いので前の選手についていくだけで全力、とても集団の前に上がれるペースでなく、チームメート達と集団後方で、必死にしがみついていました。

ちなみに集団が長く一列に伸びると集団後方の方がキツく体力が削られます。なぜ後ろの方がキツいかというと、例えばアップダウンの時は集団の前方が上りを終えて下り始めスピードを上げている時に、集団後方はまだ上ってる最中なので先頭に着いていくにはスピードを上げなければなりません。

コーナーがあった場合も同じく、集団前方はコーナーをゆっくり曲がってから徐々にスピードを上げていくのに対して、集団後方にいるとスピードを上げている集団に対しても、こちらはコーナーで一旦スピードを落とさなければ曲がれないのでスピードを落とし、コーナーを抜けてからすぐに全力で漕がないと着いていけないのです。

 

集団はペースが速いと一列になる

なぜペースが速い時に集団の選手達が1列になるかというと、自転車ロードレースの最大の敵は風だからです。風の抵抗を抑える為に人の後ろについていき、風の抵抗を減らして走ります。どれくらい違うかというと1番前の人が風を受けながら必死に漕いでいる時に、後ろの人は誰かと話せる余裕があったり、脚を止めたりしても同じ速度で進めることがあるくらい違います。

それなので集団のペースが速い時には前の選手で風を遮る為に全員が誰かの後ろに入る為、上の写真のように1列になります。この時の状態を「一列棒状」といいます。少しでも列から外れるととてつもない風を受けてしまい体力を多く消費してしまいます。それでも前に上がらないといけない時には、列から外れて風を受けながら前に上がっていきます。

それならば体力消費が少ない集団前方にいればいいではないかと思いますが、こればっかりはチーム全員の強さやチームの格が少なからず関係してきていて、そのワールドツアーのレースでは「プロチーム」は「ワールドツアーチーム」の前より位置取りすることが難しいです。

 

スイスでのレース

話は戻りますが、上記の展開で僕は物凄くキツくて、前の選手のホイールを必死に追いかけ、速くこのアタック合戦、ハイペースが終われ!と心の中で叫びながら走っていました。

チームメートも皆必死に前の選手のホイールにしがみついて走っていました。ここで集団から遅れるということはリタイアを意味するからです。

ここでスプリンターのサガン選手が僕たちより後ろに下がっていきました。

さすがにキツいのかと僕も思いましたが、そんなこと考えている余裕もなく、必死に上ったり下ったりするコースを走っていました。

僕の前には、チームメートのマランゴーニ選手というイタリア人選手が走っていました。

上り坂の時一列棒状で全員が前の選手にしがみついている中、僕たちより後ろを走っていたサガン選手がマランゴーニ選手の横に来て並走しながら走り始めました。

サガン選手は勿論一列棒状の列から外れている為、風をもろに受けています。

僕たちは列に入っているのにキツい状態です。

サガン選手は更に隣を走っているマランゴーニ選手にふざけながら話をし始めました。

しかし列に入っているマランゴーニ選手がキツすぎて返答することができずに走っていると、サガン選手は集団の列から1人外れているのにも関わらず、チームメート達が場所をとっている体力消費が少ない集団前方に1人で走っていってしまったのです。

世界が違いすぎると思いました。その上りで日本人選手の中では上れる選手に入っている引退してしまった初山選手や僕は苦しんでいました。

しかしスプリンターの彼は他人とふざけて話す余裕もあり、更に150人以上が一列で走っている中を1人、風を受けながら前方まであっという間に行ってしまったのです。先程後ろに下がったのはトラブルか何かでキツくて下がったわけではなかったのです。

僕より上れないスプリンターもいると思いますが、世界で現在活躍している一流スプリンターのほとんどが僕より登坂力があります。それはワールドツアーのレースで痛いほど痛感させられました。これはそのことを痛感させられた1つのエピソードです。

勿論僕は感心しただけでなく、その時の強烈なインパクトを練習のモチベーションの1つにして競技に打ち込んでいます。

自転車レースの集団の仕組みが少しは分かってもらえたでしょうか?皆さんも今後自転車ロードレースを観戦するときにはどのチームが集団の前方、後方にいるか、気にしてみてみるとチームの力関係などが見えてきて面白いと思います。

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