プロサイクリスト 伊藤雅和

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「逃げ」とは 3 ~僕が経験した「逃げ」のエピソード~

投稿日:2020年5月11日 更新日:

自転車ロードレースにおける「逃げ」とは複雑なもので、僕も高校生の頃などは全く理解できてなかったです。
チームとして走るようになった大学時代、選手になってから徐々に理解できたものでした。
複雑なので数回に分けています。以下各リンクになります。

「逃げ」とは 1 ~「逃げ」の目的~

「逃げ」とは 2 ~「逃げ」とはどのように形成されるか~

今回は前回書いた記事記事で僕がレースで経験したことを書いていきたいと思います。

逃げを選別して形成させた時は去年だけで2レースありました。
1つは「ツールドコリア」という韓国で行われた「ステージレース」2つ目は「ツールド北海道」という北海道で行われた「ステージレース」です。
共にチームメートがリーダージャージを残り2日を残して獲得し、共に残り2日間「逃げ」を選別しました。
今回は「ツールド北海道」の話をしたいと思います。

昨年の「ツールド北海道」は3日間の「ステージレース」でした。1チーム5人での出走のレースです。
チームメートのフィリッポ・ザッカンティ選手が第1ステージで優勝を挙げたのでリーダージャージを獲得し、第2ステージから集団を牽引する義務を負いました。

スタート前の作戦としては4人までの「逃げ」ならどのチームが乗っていても逃げさせてOK。5人ならばメンバーを見てギリギリOKということでした。
これはなぜ4人かというと、リーダージャージを着るフィリッポ・ザッカンティ選手はエースなので温存、他の選手が4人いるので、4人と4人ならば人数で負けることなくメイン集団を牽引できるからです。
スタートしてから「逃げたい」選手達がどんどん「メイン集団」から飛び出していきます。
その時飛び出した選手が4人より多かった場合は僕らのチームが状況を見て「メイン集団」を牽引しその「逃げ」を引き戻します。この引き戻す作業にかなりの体力を使います。集団の先頭で風を受け、ハイスピードで走らなければならないからです。


この選別を行っている時には集団先頭付近を常に走り続け、周りをキョロキョロと見ながら、どの選手が行ったとかどのチームが乗ったとか、今は何人前に行っているなどを確認し続けなければいけません。あとはチームメートが今どの位置にいるから今回は自分が集団を引き戻さないといけないだとか、今はあの選手が前にいるから今はここらへんを走り、体力を回復しなければ等も考えなければなりません。だいたいこれらの集団を引き戻す作業は得意不得意もあり、皆が同じ回数ができるわけではありませんが、仕事をしなければいけない選手達が順番順番にこなしていきます。この順番はあらかじめ決められたものでなくレースの流れを見ながら行っていきます。
そんなことを何度も繰り返していると9人の選手が飛び出して「逃げ集団」を形成しようとしていました。
そこで僕らのチームリーダーがそこに9人も飛び出しているのを5人だと勘違いし、ペースを弱めてしまいました。


5人だと思っていたのが実は9人行ってしまったというのを「逃げ集団」がかなり離れた所で気付き、「メイン集団」を牽引し始めました。
これははっきりいって失敗です。仕事ができる人数が4人なのに対し「逃げ集団」が9人というのは「メイン集団」を牽引するのに物凄いパワーを使うからです。


結果的にチームメートと協力し、ゴールまでには追い付きましたが、かなりの労力を使いました。
第3ステージでは第2ステージの失敗もあったので、逃げの人数にはかなりシビアになってスタートしました。
スタート後も前日と同じく、集団内は飛び出していく選手が多く、激しい展開となりました。

しかし前日の失敗を繰り返さない為に僕らも必死に選別します。


その後、第2エースとなるチームメートを含む「逃げ集団」 が形成されました。


ここで僕らは彼がゴールまで行ってもいいので、選別を終え、「メイン集団」のペースを落としながら、集団牽引し始めました。すると前の「逃げ集団」に「逃げ」乗せれなかったチームが僕らが集団先頭を牽引しているところより前に入り、「メイン集団」を牽引し始めました。すると前の「逃げ集団」を捕まえる為に他のチームが牽引し出すので僕らは先頭集団で風を受けることなく、「メイン集団」で休むことができます。
その後「メイン集団」は「逃げ集団」を捕まえ、また集団は1つとなりました。すると僕らはまた集団の前を牽引する義務を負います。また逃げの選別の開始です。
その後4人の選手が僕らが牽引する「メイン集団」から飛び出し、「逃げ集団」を形成しました。これは成功です。4人仕事をする選手がいて4人ですからこの選別は成功でした。
結果僕たちは第2ステージほどの労力を使うことなく、集団牽引をすることができました。

このように集団牽引をしなければいけないチームは、逃げを選別して形成させます。1番は人数、次にどのチームが入っているか、次にどの選手が入っているかを見ます。

このツールド北海道で集団を牽引した話は中々の骨の折れる仕事量だったので今後書きたいと思います。

次に逃げを選別されて形成させられた話です。
1番新しい話は前回にも少し書きましたが、今年行われたツールドランカウイの話です。
僕はこの時5人で逃げました。

ツールドランカウイは1チーム6人での出走です。つまり集団を牽引するチームとしては選別は成功された訳です。僕としてはわざと逃がされている状況になりました。
この日はオールフラットのコース、逃げきりは難しいとされるコース設定でした。
しかし僕は「ステージレース」も後半だし、天気も悪くなるかもしれないということもあってもしかしたら逃げきりもあるかもしれないと、逃げにチャレンジしてみる気持ちでスタート地点に向かいました。
しかし先程も書いたとおり逃げきりは難しいコースレイアウトで、僕の本当の目的はチームとして応援してくれる方々や大会側の方々にアピールしたいという気持ちやチームメート達が少しでも良い位置で走れたら良いという気持ちの方が強かったです。
スタートしてから逃げたそうな選手を探しながら僕もそれに合わせて動いていきました。
あからさまに逃げたそうな選手を見つけその選手と思いっきりスピードを上げ「逃げ集団」を形成しました。
逃げる時のコツとしては逃げたい選手をつまり一緒に逃げてくれる仲間を見つけるのが大事です。その為には集団の先頭にいてはいけません。集団の10番手から30番手くらいにいて首を常にキョロキョロしていなければいけません。その時も行きたそうな選手を見つけ一緒に逃げることができました。
これは結果的にゴール10kmを切ってほどなくして捕まり、逃げきりはなりませんでした。
やはりこれは集団に逃がされていたというです。これは完全にリーダーがいるチームに形成させられた「逃げ」でした。しかしこの日チームメートが9位の一桁フィニッシュしてくれて良かったです。

今回は「逃げ」を形成される時の僕自身の経験したエピソードでした。

次回は強い選手達が集団の強いチームが選別するもなく、無理やり決めてしまう「逃げ」について書いていきたいと思います。

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