プロサイクリスト 伊藤雅和

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「逃げ」とは 2 ~「逃げ」とはどのように形成されるか~

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逃げ」とはどのように形成されるのか。
大抵の場合レースで1番主導権を握りそうなチーム(力のあるチーム)、もしくは握っているチームが「逃げ」を選別して形成させます。


主導権を持っているチームは集団内で集団を引くという、集団の先頭を走り、風を受けながらその集団を牽引しなければならないという暗黙のルールが生じます。この集団を「メイン集団」と呼びます。
今日はこの主導権を持っているチームが「逃げ」を形成させるということを主に書いていきます。
ちなみにそれ以外で逃げが決まる時はスタートから全開のペースで走り続け、集団が疲れてきたときに強い選手達が「逃げ」を決めてしまう時です。これはまた今度書いていきます。

 

主導権を握ぎりそうなチームとはどのようなことか、これは例えば「ワンデイレース」の場合はその日に最も勝てそうな選手、チーム1人1人が与えられた仕事をきちんとこなせれば勝つ可能性が極めて高いエースを擁しているチームのことです。
ステージレース」の場合はその日のステージで勝ちを高確率で狙える選手を擁しているチームが主導権を握りそうなチームに入ります。

次に主導権を握っているチームとはどのようなことか、これは「ステージレース」でその日のスタート前に総合リーダージャージを着ている選手を擁しているチームのことです。総合リーダージャージを着ている選手とはどういうことか、これは何日間もある「ステージレース」で1ステージ1ステージをこなしていきその日の時点で最も合計タイムが少ない選手、つまりはその日の時点で最も速い選手のことです。
自転車ロードレースの「ステージレース」ではこの総合リーダージャージを終わりまで着ていると「総合優勝」となり最も栄誉あることとなります。(リンクロードレースとは)

これらの主導権を握りそうな、握っている強いチーム達がレースを落ち着かせる為に「逃げ」を選別し、逃げ集団を形成させます。ちなみに逃げが決まるまでは集団はかなりのハイペースです。


何人かを「逃げ」に行かせ、集団のペースを一旦落とし、わざと何分間かのタイム差をつけさせるのです。
なぜこの時わざとタイム差をつけるかというと、「逃げ集団」と「メイン集団」が近くで走っているとせっかく選別した「逃げ集団」に合流しようと「メイン集団」から飛び出していく選手がいるからです。このような選手達を作らない為に、このメンバーを行かせてもいいと判断した時には道端いっぱいにチームメート達が広がり、後ろから合流しそうな選手が前に行けないようにブロックを敷きます。
「逃げ集団」と「メイン集団」のタイム差が広がると前の集団に合流しようとする選手はほぼほぼいません。何故なら前の「逃げ集団」に合流するのに多くの時間風に当たらなければならないからです。風を受けることが自転車競技の中で最も体力が削られることです。
たまにこのような状況でも「メイン集団が」ペースを上げて「逃げ集団」を捕まえにいくことがあります。それは「逃げ集団」にチームメンバーを入れなければいけなかったのに、入れることができなかったチームが「メイン集団」牽引し出した時です。
そしてその強いチーム達が逃げを選別している時はこの「逃げ集団」の中に自分達のライバルになりそうな選手、チームが含まれていないか、自分達と一緒に仕事をしてくれそうなチームが含まれていないかを集団の後ろで車で走っている監督に確認して「逃げ集団」を形成させます。
わざわざ「逃げ」を行かせてしまって大丈夫なの?と思った方もいると思います。
でも大丈夫です。少人数で逃げると体力を消耗します。それは多くの時間風を自分に受ける時間が長いからです。順番順番に風を受けながら「逃げ集団」は距離をこなしていきます。
それに対して大集団では何チームかのアシストの選手達が何人かで順番に風を受けているだけで、他の選手達は集団の中で風を受けないように走っています。特に各チームのエース選手は絶対に風を受けないような位置で走れるようにアシスト選手達がそのエース選手の前を走ります。風が前から吹けば前に、横から吹けば横に走り、アシスト選手はエース選手を守ります。
このエース選手と、アシスト選手についての詳しい役割は今後書いていきます。

例えば20チーム、各6人ずつ全選手120人の150kmのレースがあったとします。序盤に逃げを形成した5人がいたとして、後ろの大集団は115人。最終的に逃げを捕まえるという強いチームの作戦で5人を行かせ、コースは風がほぼなく130km平坦、残り20キロが上ってゴールだとします。
そうなれば主導権を持っている強いチーム達は「メイン集団」牽引の仕事をする人を6人にすればまず捕まえられます。強いチームなどでは2、3人でその仕事をやりきってしまう時もあります。
3チームが仕事をし始めれば3チーム2人ずつ出せば6人になり、まず問題なく勝負所まで、そのチーム達が捕まえたい所までに、逃げ集団を捕まえることができます。
そして130km走ってから山に差し掛かる時逃げ集団が少し前を走っていてもまずその逃げ集団がゴールまで逃げきって勝てることはありません。
この場合前の5人は順番に風を受けながら走っていたのに対し、6人のアシスト選手達以外、風を受けていない109人の選手達は体力をセーブして走っていたので絶対的に有利だからです。
主導権を持っているチームは、上りに入るまで何分までなら逃げ集団を逃がしてても良いとか、逃げ集団を山の麓で捕まえてしまおうとか、最初に何分までなら逃げを行かせていいとか、今日はあのチームに仕事を手伝ってもらおう等々を作戦会議で決めてスタートしています。
「メイン集団」の前を牽引しているアシスト選手達は何km地点で捕まえれるようにと調整しながら走っているのです。
そして勝負所でエースの出番になるのです。
このレースの場合残り20kmの上り区間がエースの出番です。
エースと最初から逃げていた選手が互角に戦えることはまずなく、強いチーム達から選別されて形成した「逃げ集団」がゴールまで逃げきることはワンデイレースではほぼありません。ステージレースでもほぼありませんが以下の場合はありえます。

ステージレースでは「逃げ集団」が逃げきることがあります。これはリーダージャージを着ているチーム、総合優勝を目指すチームが集団を牽引する時にそのチーム目的が総合優勝するこということにあります。
どういうことかというと、絶対に総合優勝しないような選手達が逃げた場合は、総合優勝するチームにとって脅威的な「逃げ」でなく、「逃げ集団」をわざとゴールまで逃げきらせて、後ろの集団はゆっくりゴールすることがあるのです。ゆっくりゴールする意味はその日を回復日に当てる為です。これが起こるときの条件がもう1つ、それはステージ優勝を目指すチームが選手を「逃げ集団」にきちんと入れて後ろの集団でも仕事をしなくても良い状況を作った時です。
なのでこのような「逃げ集団」に入れた時には千載一遇のチャンスで「逃げ集団」の中で鮮烈なステージ優勝争いがされるのです。

そんな「逃げ」はプロレースの場合、大抵集団が決める・選別すると言っても過言ではありません。
僕自身、「逃げ集団」を選別して形成させた経験もありますし、「逃げ集団」に選別されて形成させられた経験もあります。
後者の方は前回の記事で少し書きましたが、次回はこれらの僕が経験した話を詳しく書いていきたいと思います。

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