プロサイクリスト 伊藤雅和

愛三工業レーシング所属 伊藤雅和のブログ

ブログ 自転車ロードレースとは

「逃げ」とは 4 ~先頭集団になる逃げ集団~

投稿日:2020年5月13日 更新日:

自転車ロードレースにおける「逃げ」とは複雑なもので、このblogで数回に分けて説明しています。
「逃げ」とは 1 ~「逃げ」の目的~

「逃げ」とは 2 ~「逃げ」とはどのように形成されるか~

「逃げ」とは 3 ~僕が経験した「逃げ」のエピソード~

「逃げ」が決まる時に集団の意思とは関係なくゴールまでその「逃げ」が行ってしまう、強い選手達で形成される「逃げ」について書いていきたいと思います。

 

エースが動いて決まる逃げ

強いチームが決める、選別する逃げについては「逃げ」とは 2で書いています。
この強いチームが選別しない逃げとはどのようなことか、これはチームのエース級が動いた時、チームのエースがチームごと動かした時に決まります。

どのような時にそのようなことが起こりやすいか、簡単に言ってしまえば、このようなことが起きる時は、天候や道路状況が悪い時がほとんどです。

この他にもなにかの要因、例えばスタートからペースがずっと速くて速いまま勝負所に差し掛かってしまった時や、スタートした直後から厳しいコース設定があるなど、サバイバルな状況の時程そのような逃げが決まることが多いです。

例 横風が吹いたとき

例えば1番多いと思うのはスタートからや、レース途中から横風が吹いた時です。

自転車ロードレースにとっての1番の敵は空気抵抗、風です。前に進む時向かい風だったら当然速度は出ず、追い風だったら速度は速くなります。

人の後ろについて走るのも少しでも風を受けないように、空気抵抗を軽減する為に走っています。

空気抵抗を減らす為に世の中の選手、自転車フレームメーカー、自転車ウェアメーカー等は様々な試行錯誤をしています。

それなので風がどのように吹くかがサバイバルな状況を作りだしたりするのです。

横から風が吹くとどのようになるか、それは前の人の真後ろにいても風が自分に当たってしまい、空気抵抗は軽減されず、苦しい状況になります。

このような時どうすれば風を受けないで済むか、それは右から風が吹いていたら前の人の車輪の左後ろ、前の人の後輪と自分の前輪が少し重なるくらいの所で走るのです。

そうなってくるとどうなるか、それは集団の後ろに行けばいくほど道幅が足りなくなってきてしまうのです。この写真も後ろに行けば行くほど苦しいはずです。

前の人の真後ろにつくと集団は縦に伸びるので道路の道幅が足りなくなることはありませんが、少しずつ横にずれていくとどこかで道幅が足りなくなり、足りなくなったところからは真後ろに着くしかなくなります。

そうなるとどうなるか、横風の場合1列になってしまった所から風の抵抗をもろに受け、苦しくなっていくのです。

前の人達はこのような形で順番に風を受けながら走っていき、速度を弱めないと、後ろだけが苦しくなっていき集団から遅れていきます。

僕も何度この横風で苦しみ、遅れたことがあるか分かりません。

コースマップを見て、風向きを見て、コーナーを曲がって、明らかに横風になると分かっているような所は、各チームの監督がレース中に運転している車の無線で、僕ら選手が試合中に携帯している無線に知らせます。

そうすると、そこのコーナーまでの位置取りは最後の集団スプリント前の位置取りと変わらないくらい激しい位置取りになります。

この横風がスタートから吹いていた時、途中から吹いてきた時など、逃げなど関係なく強い選手達が前に前に位置取りをしていき、結果として強い選手達だけの「逃げ集団」になってしまうことがあるのです。

このような「逃げ集団」のことは「先頭集団」と呼ぶことが多いです。

 

エースが入っている逃げは逃げ集団でもあり、先頭集団でもある

このような「逃げ集団」「先頭集団」はそのレースの中でも強い選手達で形成されていることが多く、ゴールまでいく確率も高くなります。

横風が強く吹いた時と同じで明らかに道が悪いと分かっているときもそこに入るまでの位置取りが大事になっていき、そこを乗り越えた「逃げ集団」「先頭集団」が最後まで勢いを落とすことなくゴールすることがあります。

強い選手、強いチームで形成されている「逃げ集団」「先頭集団」はほとんど各チームのエースは入っていることが多く、後ろの集団も追いかけるチームが少なくなり、結果ゴールまでいくことが多いです。

 

アジアツアーでは暑さで逃げが決まることもある

僕が現在主に走っている「アジアツアー」では暑い国で行われることも多く、強い選手達しか前の集団に残らないということも多いです。

この場合のサバイバルな要素は「暑さ」ということになり、体力がない選手などは自分の限界がくると暑さに対しての回復が効かなくなり、オーバーヒート、つまり熱中症みたいな症状が現れ脱落していきます。

すると前の「逃げ集団」「先頭集団」は自然と強い選手になってきたりするわけです。但しここには暑さに強いという要素も出てくるわけで完全に強さが直結してくるわけではありません。

ロードレースでは集団が選別もできない強力な選手達が逃げを決めてしまう、「逃げ集団」があります。この集団は「先頭集団」と呼ばれ、「逃げ」を決めるというよりは勝負を決めるという目的があります。

「逃げ」とは複雑で、様々なチームの作戦が入り乱れます。この逃げがどのように動いていくか、動かされていくかでその日のレース展開が大きく変わっていきます。

ロードレースを観戦する際に「逃げ」の目的、それに対する集団の動き、天候などのサバイバルを作り出す環境、様々な要素を分かった上で見ていくと更に面白く観戦できると思います。

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