プロサイクリスト 伊藤雅和

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ブログ 自転車ロードレースとは

脚質、クライマーについて

投稿日:2020年4月28日 更新日:

自転車ロードレースには「脚質」というものがあります。
脚質とはその人それぞれの得意な走り方、考え方を変えると役割のことをいいます。
「オールラウンダー」「スプリンター」「クライマー」「ルーラー」「パンチャー」「TTスペシャリスト」
の6つのタイプに分けられます。



今日は「クライマー」について書いていきたいと思います。

まず簡単に説明すると「クライマー」とは山岳を登坂することが得意な選手です。山、斜度がある比較的長い上り道を走るのが速い選手です。

1km、2km、3km程の上り坂なら「クライマー」ではないパワーがある選手でも上りきれることがあり、より険しく長かったり、斜度がある上り坂が得意です。

以前のblogで「オールラウンダー」(リンク)について説明しましたが、今回の「クライマー」は「オールラウンダー」から「TT」と呼ばれる1人で走る種目を引き算したような選手です。「クライマー」と呼ばれる選手は比較的身長が小さい選手や線が細い選手が多く、「TT」を苦手としている選手が多いからです。



勿論、「苦手」といってもグランツールで走っている有名な「クライマー」の選手は日本人のどの選手よりも「TT」は圧倒的に速いです。なぜならば山岳が得意ということはある程度一定の時間、高出力で漕ぐ力があるということだからです。

僕も世界的に有名な「クライマー」の選手達と走ったことがありますが、はっきり言うと彼らは別次元の人間です。上り坂とは距離が長ければ長いほど疲れたり、ペースが落ちていくものだと思いますが、彼らはペースが落ちません。むしろ落ちないどころか勝負どころでアタック(瞬間的に力を爆発させてこぐ)してライバル達をふるい落としにかかります。

近頃では標高が元々高い所にあるコロンビア人選手が「クライマー」として有名な選手が多いです。標高が高く、酸素が薄い所で育った選手は有酸素性運動能力が非常に高いからです。比較的小柄な選手が多いので「オールラウンダー」より「クライマー」の選手が多いです。

なぜ標高が高い所で育ったコロンビア人は強いのか、僕も標高の高い中国のチンハイという場所やコロンビアでレースしたことがありますが、そのレースのキツさ辛さ、肉体的にどのような作用が起こったということは今後書いていきたいと思います。



世界の有名なレースでTTがないステージレースもあり、そこでは「クライマー」選手が自転車ロードレースで最も栄誉ある「総合優勝」することも多いです。

山岳とは上りに入る前の10kmくらいの所から徐々に激しく位置取りが始まっていきます。特にゴールから近い山岳、ゴールが山岳ともなれば尚更です。

もう3km、2km、1kmと上り口(上りが始まる所)に近づく程にカオスです。どのチームも良い位置から上り口でエースを上らせたい為に必死で位置取りをします。物凄い、あり得ないスピードで上りに向かう訳です。

つまり上り口も物凄いスピードなんです。上り口は僕なんかでいう全力ペースです。僕もですがそこに耐えられなくて千切れる選手が沢山います。その爆発的なペースを耐えて(耐えてというより余裕)さらに長い山道を上っていく訳です。

過去に出場したツールドスイスというレースで、ステージ距離が170km、そして最後の30kmは登坂してゴールというステージがありました。

その日は上りが始まるまで140kmほぼずっと横風でずっと1列棒状、体力も疲弊していました。そしてそこから上りに入る前、更にペースが上がり速すぎて、上りに入る前に千切れました。上りに入る前に千切れたのは初めてでした。

そんな中でも世界的に有名な「クライマー」「ナイロ・キンタナ」選手は上り口からアタックして最後の険しく長い山岳を独走して勝ちました。

凄すぎてレース終わった後にびっくりしすぎてもう何もこれから努力する気が起きなくなったのを覚えています。世界の一流「クライマー」との力の差はとても埋められるものではないと肌で感じた瞬間でした。

日本で有名な「クライマー」選手「中根 英登」選手や「初山 翔」選手とレース後にあの世界の一流「オールラウンダー」「クライマー」選手達のことを、超人だ、人間ではない、等という類いの話を何度したことか分かりません。



世界一流「クライマー」の選手達はバイクで走っているのではないかというスピードで上りを駆け上がっていきます。しかしその前の上り口に入る前、上り口のペースのとてつもない速さ、とてつもない強度をこなしているのを忘れてはいけません。それをこなした上で最後まで出力を落とさずに山岳ゴールできるというのが真の「クライマー」だと思います。

日本でもそのような真の「クライマー」選手が出てきて欲しいと切実に思います。

そのような選手が出てきた時には自分の肌で感じた力差の悔しい思いも乗せて、思いっきり応援したいと思います。

僕も勿論、今後山岳の力を磨いて、少しでも世界の「クライマー」に近づけるように頑張ります。

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